質素なものさ
「人間はあらゆる種類の生物を殺し、食っているが、私の仲間たちが食うのはほんの1、2種類だ。質素なものさ」—ミギー(寄生獣)
寄生獣よりミギーのセリフです。
ある日突然、人間の脳に寄生する、寄生生物が世界中で現れる。
主人公の泉新一は、間一髪で寄生生物が脳へ寄生する事を免れるも、右腕を乗っ取られてしまう。
かくして、泉新一は右腕に寄生した寄生生物の「ミギー」と共に生きて行く事を余儀なくされる。
というお話の中で、かなり最初の方にミギーが放ったセリフ。
「悪魔というのを調べたが、一番それに近い生物は人間だと思うぞ」
というのも結構有名なセリフかと思いますが、はせがわはその後の
「人間はあらゆる種類の生物を殺し、食っているが、私の仲間たちが食うのはほんの1、2種類だ。質素なものさ」
というセリフがすごく印象に残っています。
寄生生物に寄生された人間は脳を乗っ取られて死んでしまう訳なんですが、その乗っ取られた、人間の形をした寄生生物たちが世界中で人間を殺して食っているという話の中で出て来たセリフです。
つまり「寄生生物が人々を殺している事をみんな騒いでいるけど、こっち(寄生生物)側からしたらただ食事してるだけだし、人間なんてあらゆる種類の生物を食べるために殺してるけど、我々寄生生物が食べるために殺してるのは人間という種類くらいなもんだよ」ってミギーが言ってるのです。
もうこれだけでかなり核心的なセリフで、すごいなぁと思うのですが、脚本勉強中の身からするとその後に何気なく添えられた「質素なものさ」に感心しちゃいます。
物語のキャラクターって、当然ながら実際に会って会話することが出来ないから、キャラクターの性格を観客に理解してもらうには「行動」と「セリフ」しか無いようなんです。
このキャラクターはこういう性格だからこんなセリフを喋らせよう。とか色々考えるのですが、それがわざとらしくなってしまうのもつまらないのです。
暗い奴だからって暗い事ばっか喋ってても、なんかわざとらしくて観てて醒めちゃいますしね。
そこで、いかにそのキャラクターの性格をセリフと行動の中で自然に溶け込ませられるか、というのが課題になってきます。
ミギーって 新一の右手に寄生したおかげで、生きていくための栄養分は新一の血液を通して勝手にまわってくるんです。
だからミギーは人間を食べなくていいし、食べたいとも思わない。
冷静で淡白で、勉強熱心で博学だけど、あまり欲が無くて…
そんなミギーの性格が、この一言に現れてると思うんです。
「人間はあらゆる種類の生物を殺し、食っているが、私の仲間たちが食うのはほんの1、2種類だ。質素なものさ」
ミギーらしく、ただ事実を述べて、最後にすごく皮肉っぽく言い放つんです。
多分はせがわがこのセリフ考えついたら「人間はあらゆる種類の生物を殺し、食っているが、私の仲間たちが食うのはほんの1、2種類だ」で終わらせちゃうんだろうなって思います。
「質素なものさ」はすごくミギーらしくて、キャラクターの性格ってこうやって付けていくんだなってすごく勉強になったセリフでした。
寄生獣は他にもすごく心に響くセリフがあるので、今度また何か取り上げられたらいいなって思います。
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